ドーナツ盤コレクションサイト ~ もう一度応えて欲しかった 十二月の旅人よ ~
 僕とドーナツ盤との出会いは、イモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」でした。これが初めて自分で買ったシングルです。イモ欽トリオとは「欽ちゃんのドンといってみよう!」というテレビ番組の人気コーナー「良い子悪い子普通の子」から生まれた 長江健次、山口良一、西山浩司で結成されたトリオでした。当時「欽ドン!」は大人から子供まで幅広い層に支持された、お茶の間に欠かせない超人気番組でした。ハイスクールララバイは作詞・松本隆、作曲・細野晴臣というクレジットで、この後僕がレコード収集にはまってしまうきっかけとなったのは大滝詠一からはっぴいえんどの系譜を辿りたいという思いからでしたので、まさにスタートラインから既に彼らの手のひらを飛び回る、孫悟空の如き自分であったということになります。
 当時のシングルレコードは700円でしたので、1ヶ月1500円のお小遣いでシングルを買うのはかなり勇気のいることでした。アルバム(2,800円)なんて2ヶ月飲まず食わず(駄菓子やジュースを)の生活を覚悟しないと買えない、レコードは超ぜいたく品だったのです。そんな感じで安易に買える代物ではないために吟味を重ね、再び心のゴーサインが出たのは、テレビで「みゆき」というアニメーションが放送され、そのエンディング曲であったH2O(エイチツーオー)というグループの「想い出がいっぱい」でした。続けて同じくH2Oの「Good-byeシーズン」というシングルでした。
 この時期から気に入った曲が出ると断続的にシングル盤を買っていくのですが、高校生になった僕は中古レコード店なるものと出会い、100円から300円でシングル盤が買えることを知り、同じ趣味を持った友人達とも出会い、またアルバイトも始め資金にも少し余裕ができたことから京阪神の中古レコード店を毎週のように通い始め、バイトで稼いだ金もほとんどレコードに使うようになりました。

 僕がレコードを「集める」きっかけとなったのは、大滝詠一(以下師匠)のアルバムのナイアガラレーベルジャケ写内袋に魅せられてしまったからです。もちろんその音楽にも非常に興味を持ちました。師匠を知った最初のアルバムは「A Long Vacation」で、それまで70年代のいわゆるフォークソングと呼ばれている音楽を聴いてきた僕にとって、あのスペクターサウンドの洗礼は強烈でした。しかしここで「ロンバケ」以降にはじめて師匠を知り、そこからナイアガラの源流を辿る旅に出てしまった旅人は心当たりがあると思います。そう、僕もギャップというか、なんというか、どう感情表現していいのかわからない、精神的なショック状態を体験しました。
 「ロンバケ」の次に聴いたのは「ナイアガラカレンダー」です。針を落として1曲目「君は天然色」のような爽やかなポップスが流れてくると信じていました。しかし僕の耳に入ってきたのは「あけまして、おめでとうございます!」。えぇ、「Rock'n Roll お年玉」ってなんか変だと思いましたよ・・。なにかの間違いだと、同じ人とはどうしても思えない、そんな僕をかろうじて慰めてくれたのは「ブルーバレンタインディ」と「青空のように」でした。
 しかし聴いていると不思議なもので、だんだん慣れてくるんですね。師匠の音楽は噛めば噛むほど味の出てくるするめポップスでした。そんな状態で毎日ジャケ写内袋を眺めていると他のレコードも欲しくなってくるんですね。で、それが中古レコード店を回り始めた時期と重なっていましたので、師匠のレコードを探してみようかなとなるわけです。そしてまたショックを受けることになります。そう「高い」のです。
 当時大阪難波の某中古レコード店で見つけたのは「ナイアガラムーンELEC盤帯付\12,500也」でした。まだレコードの価値や流通量など、全然わかっていない時期でしたので、もう憧れの眼で眺めていました。でもいつか内袋のレコードを全部集めてみたい、心に少しだけ火が点いた自分を実感していました。買いたいけど買えない、だからどこかで安く見つけてやる、そういう気持ちで中古レコード店に通い始めたのだと思います。

 ドーナツ盤は、それ1枚の片面に1曲しか入っていません。だからそのシングルの「1曲を持っている」、という実感を沸かせてくれます。これはアルバムでは感じることのできないものです。またその片面は約4分程度の小さな世界であり、その短い演奏時間に製作者は全てをかけヒットを目指します。ヒット曲はシングル盤からしか生まれないと言っても過言ではありません。それはシングルとして提供される媒体に関わることのない普遍のものだと思います。
 ターンテーブルに乗せて針を落とし、ジャケットを眺めながら「プツプツプツ」とスピーカーから聴こえてくる時、「さぁ今からこの曲を聴くぞ」と思ってしまいます。その曲と自分との1対1の付き合いといってもいいかも知れません。またドーナツ盤は聴き流すことを許してくれません。僕の場合一度に何曲も聴きますので、1曲が終れば次の1枚を取り出してきて、盤面が少し汚れていれば軽くクリーニングして、と忙しいものですがそこがまたいいのです。


最後に、

 このページは持っているものだけを紹介するというものですから、完全なディスコグラフィーには仕上がらず、資料的には不十分になりますが、できるだけ調査して穴埋めしていきたいと思います。
 ネットオークション出品者による出品ページの補足説明として当ページの画像にリンクを張るのは、出品ページの閲覧者に誤解を与える可能性がありますのでご遠慮ください。
 掲載しているレコードに関する素朴な疑問、まちがいみっけ、などありましたら覚えておいて下さい(笑)。いずれなんらかの連絡手段を考えます。
 それでは適当にやってますので適当に見てやってください。ここまでお読み下さいましてありがとうございました。





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